地上 300メートルという恐怖環境で乗る。
シートに着席した瞬間、あまりの高さとそれに伴う視界で目がくらむ。その直後、すごい馬力でアッという間に天に向けて打ち出される。装置全体が鉄柱にしっかり固定されているとはいえ、背後にあるそんなものはまったく見えないため、まるで大空に放り出されてしまったかのような錯覚に陥り、その恐怖は半端ではない。その瞬間、足元がすくわれるような無重力状態に突入し落下が始まる。息を止める暇も吸う暇もないまま、また上昇局面に突入。これを２回繰り返して終了となるが、現場のスタッフの説明によると、結局だれも息をしていないとか。だれかゆっくり深呼吸しながらリラックスした表情で乗ってみるとおもしろいかもしれない。
　リラックスできていたかどうかは自動撮影による写真がその証拠をとらえてくれるのであとから確認することが可能だ。その写真はもちろん有料 （価格はサイズによっていろいろ）。

■　発射地点の高さ：　地上921フィート （280m）
■　最高到達地点：　地上1081フィート （329m）
■　上下差：　160フィート （49m）
■　上昇時の加速度：　約 ４Ｇ
■　落下時の加速度：　ほぼ自由落下
■　定員：　16人
■　営業時間：　朝10時から深夜１時まで （季節や曜日によって多少異なる）
■　待ち時間：　ライドで待つことはほとんどないが、タワーへ昇るためのエレベーターはかなり待つことがある。

　2005年 3月に、高さ約 350m （鉄塔の上部まで） を誇るストラトスフィアタワーの展望デッキ部分に登場した絶叫マシン。

　同タワーにはすでに High Roller、Big Shot、X-Scream があるので、今回の Insanity は第４番目のライドということになるが、ちなみに Insanity の意味は [狂気] や [精神異常]。
（なお、High Roller は、2005年 12月 31日をもって閉鎖されてしまった）

　試乗した感想としては、事前の想像の範囲を超えるものではなく、高い場所にあるということ以外はごく普通のライドで、期待以上のものでも以下のものでもない。

　そういう意味では、平凡かつ単純な動きの中にも、バカバカしい笑いの要素が感じられる X-Scream の方が興味をそそられる。世間での評価も X-Scream の方が高いのではないか。事実、近くで見ている見学者からの笑いの声は X-Scream の方が断然多く、見学者にとっても Insanity は意外性が少ないように見受けられる。
　さらに指摘させてもらうならば、宙づりのカタチで乗るようにするか、何かにまたがって乗るなど、少なくとも足元だけは不安定にすべきだろう。この Insanity では、しっかりした台の上に固定されたイスに座るカタチで乗るようになっているため、スリルが半減してしまうばかりか、下方の視界もかなり制限されてしまう。

　あと、気になることとして、目をしっかり開けて景色を楽しむ余裕がある者にとっては、方角的な位置にも不満が残る。タワーの中心軸から見てストリップ地区のホテル街の方向を向いていないため （方角的にはタワーの北北東側に設置されている）、見えるのはダウンタウン地区およびラスベガス北東部から北西部にかけての殺風景な郊外だ。
　もっとも、この位置の問題は、建設上のスペース的な制約からやむを得ない部分もあり、また、ストリップ側の景色を見たければ展望デッキから見ることができるわけで、どうでもよいことかもしれない。それでも、乗りながらストリップの景色を楽しみたいという者にとってはやはり物足りないだろう。

　ラスベガスで最も高い建造物ストラトスフィアタワー （鉄塔の先端部まで約 350m） の展望デッキ部分に新型絶叫マシン "X Scream。

　どんな乗り物か…。まずは 「百聞は一見にしかず」 なので、現物の写真を見ていただきたい。右写真の緑色の施設がその "X Scream" だ。

　ようするにシーソーのような乗り物で、乗っている者は、展望デッキの外周のフチからハミ出すように外側に向かって滑り出すことになる。

　動きは、基本的にシーソーとほとんど同じで、特に変わった動きをするわけではない。もしこれが地上にあったら、だれも乗らない実にバカバカしい乗り物になってしまうところだろうが、地上 270mでやるとこれが絶叫マシンになるからおもしろい。まさに "アイデア賞" といったところか。


さて乗ってみての感想だが、動き的にはまったくこわくないが、視覚的なこわさは想像以上で、それなりに楽しめる、というのが率直な感想だ。
　ただ、他の絶叫マシンと比べると、プラスの加速度もマイナスの加速度も、その変化は無いに等しく、そういう意味では、同じ場所にある "Big Shot" （鉄塔部分にある垂直移動型のマシン） の方が恐い。

　つまりこの "X Scream" では、"Big Shot" やその他の過激なローラーコースターなどにありがちな、加速度の変化から来るあの息がつまるような感覚を味わうことはできない。
　逆に考えれば、その種の感覚が嫌いな者でも楽しめることになり、子供や心臓病などの問題を抱える者にとっても体力的な負担が少なく、そういう意味では 「老若男女向けの乗り物」 ということができる？
そもそもこの乗り物は、目を閉じればただのシーソーだ。
　なお、老若男女といっても身長に制限があり、48インチ (約 122cm） 以下の者は乗ることができない。

　実際の動きとしては、十数メートルのアーム上を台車が ３往復するだけで、単純であると同時に、時間的にも非常に短い。
　そんな短い中、最も恐く感じる部分は、アームの先端部分で停止したあと、上下に揺れたりする場面か。
　が、本当に恐いのは、台車が外へ向けて滑り出し、その先端部で急停止する際、「ネジなどの金属疲労や土台部分のコンクリート腐食などでそこがはずれたら…」 などと考えたりした時かもしれない。
　本当にそういったことを心配する者は、老朽化する前に乗った方がよいことになるが、設計ミスなどによる事故は初期の段階で発生したりするものなので、判断がむずかしい。
　冗談はともかく、この乗り物は、その動きから来る体感的な恐さよりも、視覚や頭で考える恐さの方が大きいことだけはたしかなようだ。

景色は言うまでもなくすばらしい。台車はちょうどストリップ地区のホテル街に向かって滑り出て行くので、先頭にすわると絶景を楽しむことができる。
　夜間はナイトイルミネーションが美しいので、できれば日没後がおすすめだ。ただ、夕方以降は夜景目的の観光客が増えるばかりか、地元の子供たちが乗りに来るため、彼らの体験が一巡するまでのしばらくの間はかなり混雑する。一方、平日の日中は学校があるため比較的すいている。なお、地上からエレベーターに乗る際、テロ防止のための手荷物検査があり、夜間の混雑時などは長蛇の列になるので、ナイトショーの前に行くなど、何か予定があとにつかえている場合は注意が必要だ。

　営業時間は季節などによって流動的だが、とりあえず今は平日が午前 10時から深夜 1時まで、金曜日と土曜日が午前 10時から深夜 2時まで、となっている。
　チケットは数ヶ所で買うことができるが、一番わかりやすいのは、ストラトスフィアホテルのカジノフロアからエスカレーターを上がったところ。